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執事の話

待ち人きたらず

愛する人を待っているとき、二つの感情が交錯します。
もうすぐ会えるという期待感と、もしかして来ないかもしれないという不安感。
今日のお話しはそんな姿をよく描写したものですが、原題はネタバレになるので最後にお知らせします。
Red at the Restauarant

「二人がけのテーブル」

彼は独りで、二人用のテーブルに座っていた。
制服を着たウェイターが彼の隣に来て尋ねた。
「もう注文なさいますか?」
男は実のところ7時からずっと待っていた。
ほとんど一時間半になる。
「いや、大丈夫だよ。」男は微笑み「もう少し彼女を待ってみるよ。」
「それではコーヒーはどうですか?」
「ありがとう。頼むよ。」
男は座って、きれいな青い瞳はテーブルの中央にある花で飾られた装飾品をまっすぐ見つめていた。
彼はナプキンを指で触れながら、チリンチリンとなる銀製食器を軽く音立てながら
甘美な音楽を味わっていた。彼はスポーツコートとネクタイを着ていた。
彼のダークブラウンの髪はこぎれいに櫛でといており、一筋の髪をおでこに下げていた。
彼のコロンの香りは彼の清潔な髪型をさらに際立てていた。
彼はきれいにめかしこんでいて、連れ合いがとても大切で、尊敬されていて、愛されていることが感じられた。
しかし、相手に居心地悪くさせるほどお固くもなかった。
彼は相手が気楽にいられるように十分注意を払っているようだった。
それでも、彼は独りで座っていた。
ウェイターはその男のコーヒーカップを満たしに戻ってきた。
「他にも何か必要ですか?」
「いや、大丈夫だよ。」
ウェイターはテーブルのところで立ったまま、何か好奇心を覚えていた。
「詮索するわけではないですが…」彼の声は次第に小さくなりながら。
この手の会話は彼のチップを危うくさせるかもしれないのだが。
「どうぞ」男は後押しした。彼は強く、それでいて繊細に会話に誘った。
「どうしてあなたはそこまで彼女を待つんですか?」ウェイターはとうとう切り出した。
この男は、他の日も、いつも独りで辛抱強く待っていた。
男は静かに答えた。「何故なら、彼女には私が必要だから。」
「本当ですか?」
「勿論」
「あの、傷つけるつもりではないですが、彼女があなたを必要としているなら、そのようにはしないのではないでしょうか?
彼女は今週だけで3回もあなたとの約束をすっぽかしているのですよ。」
男は顔を曇らせ、テーブルを見下ろし、「うん、わかってるよ。」
「それなら、何故ここに来てまた待つのですか?」
「キャシーはここに来るって言ったんだ。」
「彼女は前にそう言ったんですよね?」ウェイターは異議を唱え「私だったら我慢できませんよ。どうしてあなたは我慢できるのですか?」
今度は男は顔を上げ、ウェイターに微笑んで、シンプルに答えた「何故なら私は彼女を愛しているから。」
ウェイターは歩いて立ち去り、どうして週に三回も約束をすっぽかせる女性を愛せるのだろうかと不思議がった。
その男はきちがいに違いない。部屋を横切って、再び彼はその男に振り返った。
男はゆっくりとコーヒーにクリームを注いでいた。
彼は砂糖をかき混ぜるのに、指でつまんだスプーンをくるくる回していた。
しばらく液体を眺めたあと、男はカップを口に運び、一口のみ、静かに彼の周りを見渡した。
彼はきちがいには見えない。ウェイターは認めていた。きっとその女性が見たこともないほど、よほど上等な人なのだ。
もしくは、その男の愛が何よりも強いものなのだろう。
ウェイターは頭を振り、物思いをやめ、5人グループの注文を取りにいった。
男はウェイターを見て、彼が待ちぼうけをくらったかどうか考えた。
何度も経験したことだ。しかしまだ慣れない。
毎回、とても傷つく。彼は今夜も一日中待ちわびていた。
彼にはキャシーに話したい胸躍らせるようなことがたくさんあった。しかしもっと重要なのは
彼はキャシーの声を聞きたいのだ。彼は彼女にその日のことについて彼に話してもらいたいのだ。
彼女の大成功や、大失敗、全てのことを本当に。
彼は何度もキャシーにどれだけ愛しているか示そうとした。
彼は彼女もまた彼を気にかけていることを知りたいのだ。
彼はときおり、コーヒーを口に含み、物思いにふけ、キャシーが遅れていることを知りながらも
それでも彼女がやってくることを期待していた。
時計が9時半を示したとき、ウェイターは男のテーブルに戻ってきた。
「何かご注文がありますか?」
今なお空の席に彼は心痛めて「いや、多分今夜はこれでおしまいさ。」
「チェック(清算)してもらえるかな?」
「了解しました。」
ウェイターが去ったとき、男は清算書を取り上げ、財布をとりだしサインした。
彼はキャシーにご馳走するために十分なお金を持っていた。
しかし、5杯のコーヒーとチップのお金を取り出しただけだった。
どうしてだい、キャシー。テーブルを立つとき、彼は心で泣いた。
「またのお越しを」ウェイターはドアに向かって歩いていく男に言った。
「お休み。いろいろありがとう。」
「どういたしまして」ウェイターは柔らかく答えた。
彼の微笑みが彼の目にある悲しみを隠せていなかったからだ。
男は笑っている若いカップルを通り過ぎ、
キャシーと持てたかもしれない素晴らしい時間を考えながら目を輝かせていた。
彼は受付に立ち寄り、明日の予約を入れた。
きっとキャシーは明日はこれると考えて
「明日の7時に二人席ですか?」ホステスは確認してきた。
「はい。それでお願いします。」男は答える。
ホステスは尋ねて「彼女が来ると思いますか?」
決して無礼にではないが、彼女はその男が何回も二人席のテーブルに独りだったのを見ていたからだ。
「いつかね。だから僕は彼女を待っているよ。」
男はコートのボタンをとめ、レストランから独りで出て行った。
彼の肩は丸くなっていた。しかし、風のために丸めているのか、男の悲しみがそうさせているのか、窓を通じてホステスは推測するだけだった。
男は家に向かい、キャシーはベッドに向かっていた。
彼女は友達と遊んだあと、疲れ果てていた。
彼女がアラームをセットするため手を伸ばし、
彼女は昨晩自分で書いたメモを見た。
『7時、祈りのために時間を使おう』
しまった!
彼女はまた忘れてしまった。罪の痛みを感じたが、すぐに横に置いた。
彼女には友人との時間が必要だった。そして今度は眠りが必要なのだ。
彼女は明日の晩にもまた祈れる。キリストはきっと彼女を許してくれる。そして気にしてないに違いない。
‐作者不明‐

いかがだったでしょうか。
このお話の原題は「Table for Two  –  Is God waiting for our prayers?
直訳すると「二人がけのテーブル-神は私たちの祈りを待っているのか?」です。
私は人との約束の時間には遅れないのですが、神との約束の時間にルーズになりがちな不肖者ですが、待っている側の心の痛みに気づかせてくれるいいストーリーでした。
良い出来事も、悪い出来事も、全て神に告げる祈りの習慣、意外に出来ていないなと反省させられました。
それでは今日のところはこのあたりで。
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